ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」精読 (岩波現代文庫) [歴史(日本史世界史)]

ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」精読 (岩波現代文庫)



ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」精読 (岩波現代文庫)
ベンヤミン「歴史哲学テーゼ」精読 (岩波現代文庫)

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計量経済学的歴史観

ベンヤミンの主唱する「文化史的弁証法」(16?24頁)は、一言(統計学的ターム)で云えば、単純な最小二乗法ではなく例えばボックス・ジェンキンス法のような計量経済学的手法により歴史を解析するということに他ならない。即ち、終わりなき分割(二分法の連続適用)を通じ、「積極部分」を抽出し、更に残余(residuals)から「積極部分」を抽出し、「消極部分」が完全なホワイト・ノイズになるまでこれを繰り返すということだ。そして、こぼれ落ちた後掬い上げられる「積極部分」が第4テーゼにいう「確信や勇気やユーモアや智慧や不屈さ」なのであろう。
渾身の力作か

基本的にベンヤミンは難しい。でもって歴史哲学テーゼはベンヤミンが死の直前まで肌身欠かさず持っていたという意味で非常に重要な資料であると同時に、目次とその若干の解説でしかないと言う点でさらに読みの困難さが倍増している。そのまま読むと「はぁ?」で素通りしてしまうので、自身で解釈や補いをしながら読みを深堀りする必要があり、読解は「ちゃんとやるには」困難を極める。その意味で、今村氏の読みは非常に助けになる。ベンヤミンの解説ものは、光の当て方で如何様にも変化する(単純に見ても、アドルノ的・ショーレム的・ブレヒト的の3通りの解釈はそれなりに深い意義がある)ので、これはあくまでひとつの解釈には過ぎないとはいえるが、非常にクリアに読みがされている。ベンヤミンを読むのであればはずせない一冊であると思います。
本当の意味での「精読」

ベンヤミンといえば、ヘーゲルの進歩的歴史観に抵抗しつつ思索を重ねていった思想家・文芸評論家・エッセイストだと思われるけど、ここでは最晩年の論綱「歴史哲学テーゼ」断片18個と付録2個が丁寧に解説される。一つ一つの関連を追っていく今村仁司さんの論じ方には説得力あり。

同じ岩波現代文庫の多木浩二『「複製時代の芸術作品」精読』と合わせて読めば、ベンヤミン思想の多様な世界に入る入門になりそう。
この二冊を終えたら、今度はいきなり『パサージュ論』という途があなたを待っている。



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